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青の宝石
人が宝石になるときは足からなのだという。何でも動き回られると欠片が剥がれやすくて宝石のほうでも困るから、まずは足を固めるらしい。
「青くてきれいだろう」
「そうだな」
「青くてきれいだろう」
もう人間なのは顔の半分だけになった彼は笑う。脳の方も半分が宝石だそうで、同じ言葉しか言ってくれない。トルマリンだかサファイアだか忘れてしまったが、宝石になる前はそういったきらきらしいものに興味もなかったくせに、自分がなってみたら自慢らしい。
「そうだな、青くてきれいだ。青くなくてもきれいだったが」
どうせもうわからないのだからと余計な言葉を口走る。
嬉しそうにする顔。残された表情は笑顔しかない。人は宝石になる時、幸福しか感じないらしい。
「青くてきれいだ」
体のどこも空のように透けていて、まるで五月の空のような、空元気の青だった。
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