旅ねずみと活火山
昔あるところに、一匹の旅ねずみがおりました。
旅ねずみはちっぽけで喧嘩も弱かったので、群れから飛び出して、あちらこちらを放浪して歩いているのでした。
ある、嵐の近づいてきた春の夜のこと。旅ねずみは今夜の宿を探して原っぱを歩いておりましたが、残念なことに、ねぐらにできそうな木のうろも穴ぐらも見つかりません。
小さな肩に背負った荷物を下ろし、小石に腰かけて途方に暮れておりますと、少しばかり歩いた先に、大きなはげ山のあるのが見えました。
「あすこなら、わたしをいじめる鳥などもいないだろう」
気を取り直したねずみは立ち上がりますと、はげ山へ向かって歩き始めました。
その様子を見ていたのでしょう、一匹の白うさぎが慌てて、ねずみを呼び止めました。
「おおい、おおい。ねずみくん。君はもしや、あの危ない火山へ行くのではあるまいね」
「こんにちは、うさぎさん。ええ、わたしはあの山を今日のねぐらにするつもりです。嵐も近づいておりますから」
「やめたほうがいい。考え直したまえ」
白うさぎはびっくりして飛び跳ねました。
びゅう、と少し強い風が吹き、白うさぎの後ろでは葉っぱがひらりと舞いました。白うさぎは風のやむのを待って、賢そうな顔で続けました。
「あすこは、らんぼう者の活火山なんだ。確かに洞窟はずいぶんたくさんあるのだけれど、ごらん、草木も生えてやしないだろう。非常に怒りん坊で気難しいのだ。この間もどかんと一発噴火してね。おかげであんなはげ山になってしまったのだよ」
「へえ、そうなのですか」
「嵐をしのぐなら、もう少しましなところを探してごらん。残念ながら、私のうちはもう、家族でいっぱいだけれど」
白うさぎの振り返った先には小さな穴ぐらがあり、そこからは子うさぎたちがこっそりとねずみの様子を窺っていました。
「ご親切にありがとう。もう少し、探してみます」
ねずみは親切な白うさぎにお礼を言いますと、辺りをもう少し見て回ることにいたしました。
しばらくそうして原っぱを歩いておりましたが、どの木のうろも、りすや鳥で埋まっておりますし、空いていそうな穴ぐらには、いじめっ子のいたちやたぬきたちが入っておりましたので、ねずみはほうほうの体で逃げ回らないといけませんでした。
息を切らしながら走り回っている内に、空模様は変わってきております。
「やや。もう雨が降ってきた。しかたない。嵐に吹き飛ばされて命を落とすのも、火山の怒りで命を落とすのも同じだろう。ええい、ままよ」
ぽつぽつと、冷たい雨がその小さな体にぶつかり始めましたので、ねずみは四つん這いになりますと、走って火山の方へと向かいました。
火山の前にたどり着いたねずみは、丁寧に頭を下げました。
「火山さん。火山さん。お休みのところ、ご無礼をお許しください。この小さなねずみに、どうか一夜の宿をお貸しください」
雨の勢いは少しずつ強くなり、ねずみの体を打ちはじめますが、火山はその中腹に開いた目でぎょろりとねずみをひと睨みし、にべもなく断ります。
「ふん。ならん。どうせお前も、俺をはげ山と、らんぼう者と罵りに来たのだろう」
「いいえ。違います。この小さなねずみが、どうしてあなたのように大きな方をいじめることができましょうか。どうか一夜、あなたの洞窟をお貸しください。このままでは、わたしは文字通り濡れねずみになって風邪をひいてしまいます」
「ふん」
火山は初め相手にしませんでしたが、その小さな体が容赦なく雨に晒されているのを見て、少し考えを変えたようでした。
「勝手にしろ。たくさんあるおれの洞窟に、ちっぽけなねずみ一匹入ったところでどうともなるまい。もし何かするようなら、洞窟を崩してやるからな。覚悟をしておけ」
「ありがとうございます。恩に着ます」
「ふん」
火山は気のない返事でしたがねずみは大喜びで、手近な洞窟へ入りますと荷解きをし、岩の上へ寝そべって夜を明かしました。
嵐は、夜が明けても一向に収まる気配がありませんでした。
洞窟の入り口から外を見て、旅ねずみが「参ったなあ」と零しておりますと、やがて洞窟の中に低い声が響きました。
「おい。もう少し奥に入っておけ。入り口近くだと、岩が崩れるからあぶないぞ」
「いいえ、ひと晩とのお約束でしたから、機を見て外へ出ようと思います」
「馬鹿なことを。お前のようにちっぽけな者がこの嵐の中に外に出たら、きっと病になるだろう」
案外のやさしい申し出に、ねずみは目をぱちくりさせましたが、やがてほっとして感謝を述べました。
「ありがとう。助かります」
「ふん。近くで死なれても困るだけだ」
火山はつんと突き放したように言いました。
けれどどうやら照れているらしいことは、洞窟の中がほんのり暖かくなったことでねずみには分かるのでした。
どうやら、うさぎの言うほどの気難し屋ではなさそうです。
「くしゅん」
体を冷やしたのか、ねずみは一つくしゃみをすると、ぶるんと体を震わせました。
火山は変わらずつっけんどんに言い放ちます。
「その洞窟は、奥までずっと続いているんだ。草木などはないが、昔だれかがおれから逃げるとき置き忘れていった藁があるだろう。勝手に使え」
「……ありがとう。あなたは本当は、やさしい火山なのですね」
「勝手なことを言うな」
火山は照れたのか、それきり黙ってしまいましたが、ねずみは感謝しながら藁のベッドに身を横たえました。
翌日も、その翌日も、嵐はなかなか去りそうにありません。しばらくの間逗留することになりそうですし、何より泊めていただいたお礼もあるので、ねずみは洞窟の中の掃除を始めました。
藁で編んだ箒を尻尾の先にくくりつけ、ぱたぱた、ぱたぱた、埃を払います。大きな洞窟は、ちっぽけなねずみにとって、掃除のしがいのあるものでした。
「おい。おい、何をしているんだ」
火山が少し困惑ぎみに問いかけました。
「お前はどうしてそう、おれの腹の中をくすぐるのだ」
「はい。せっかく泊めていただいたのですから、お礼に洞窟をきれいにしようと」
「お礼だと」
「お世話になったならお礼をすることは、旅ねずみの常識です」
火山は少し唸ると何か考えているようでしたが、「そうか」と言ってそれ以上問うことはありませんでした。ただ時おり、くすぐったそうにその大きな体を震わせてはごほんと咳払いをするのでした。
たくさん掃除をいたしましたのでお腹のすいた旅ねずみは、荷物の中から残り少ない食料を取り出して口にしておりました。
洞窟の中はどうしてかほんのり明るくて、また外が危ない様子になると火山がぶっきらぼうに教えてくれるので、ねずみは困ることはありませんでした。
しかし、草木はどこにも生えておらず、またこの嵐でありますから、どこかで食料を調達いたしませんとそろそろ飢えてしまうだろうとぼんやり考えておりました。
「おい」
「ええ、どうしました、火山さん」
ねずみは火山の呼びかけるのに、もうそれほど怯えることはありません。
火山が本当はやさしいのを知っているからでした。
「もしのどが渇いたなら、その洞窟の奥に水が溜まっているから、それを飲むといい」
「ありがとうございます。やさしい火山さん」
「そんな、血迷ったことを言うのはお前くらいだ」
火山は困惑しながらも、しかし嬉しいようでまた少し洞窟の中が明るくなりました。
ねずみはふと、こんなに火山はやさしいのに、どうしてらんぼう者などと呼ばれているのだろうと考えました。
洞窟の奥にある泉の水でのどを潤しますと、ねずみの口からはするりと疑問が飛び出してしまいました。
「そういえば、火山さんはどうしてそんなに、噴火ばかりするのです」
あっ、しまった。ねずみはつい問うてしまってから、まずいことを聞いただろうかと気づきました。
しかし、火山は案外にもあっさりと答えます。
「簡単なことだ」
その声はいつもより幾分低く、洞窟の中に響きました。
「皆、おれがまだ何もしていない時分から、ずいぶんと馬鹿にしてきやがったのだ。火山はかんしゃく者だ、らんぼう者だと。だからおれはついむらむらと怒りが燃え上がって、皆の言うとおりに噴火してやった。そうしたらとうとう、おれは本当のらんぼう者になってしまったというだけだ」
「ほんとうのあなたはとても優しいのに」
「ふん。おれは、今じゃほんとうのらんぼう者だぞ。怖い怖いかんしゃく者なのだ」
火山はそう言っていますが、その言葉が本心でないことはねずみに良く分りました。
ねずみも旅ねずみのくせに寂しがり屋でしたから、気持ちが一層届いたのです。
「ねえ。ねえ火山さん。私たち、お友達になれるんじゃありませんか」
急な提案に、火山は少し面食らったようでした。
ねずみはお構いなしに続けます。
「わたしは群れでいじめられ、本当の住みかを探してこうして旅に出ております。旅はまだまだ続きますけれど、はぐれ者どうし、ここでお友達になるのも素敵じゃありませんか」
「ふん――」
火山はつんとしておりますけれど、まんざらでもないのは洞窟の中がほんのり温まるのでねずみにもわかりました。
「ああ。食料さえここにたっぷりあれば、火山さんの中に住んでもいいのに」
「おれに草木が生えるのは、きっと何十年もの先になるぜ」
「うふふ。その時はきっと、ここに住まわせてくださいね。そして今よりもっともっと、仲良くなれるでしょう」
その時風が洞窟の奥まで吹き込んできて、ねずみは笑いながらくしゃみをしました。
翌朝は快晴でした。嵐がようよう通り過ぎたのです。火山は少しばかり残念な気持ちが自分の中にあるのを感じながら、ねずみの別れの挨拶を待っておりました。
しかし、ここを仮住まいにしてから随分と話しかけてきていたちっぽけなねずみは、今日は話しかけてくる気配がありません。
夜の内に出て行ったのでないとわかることには、洞窟の中に確かにその存在を感じます。
――仕方がないな。お寝ぼうめ。
少し照れながら、火山は一つ咳ばらいをすると、ねずみに話しかけました。
「ごほん。おい、こら、ねずみ。ちっぽけなねずみ。晴れたぞ。出立しなくていいのか」
「ああ……、火山さん」
どうしたことでしょう。ねずみの声には元気がありません。
火山が不思議に思っていると、ねずみは答えました。
「風邪だと思っておりましたが、どうやらすっかり病を得てしまったようです。少し熱が出ております。すみませんが、もうしばし、洞窟をお借りできませんか」
「それは、もちろん。構わないが……」
「ありがとうございます。やさしい火山」
ねずみは眠ったようでしたが、火山はひどく狼狽いたしました。
何せ、この山ははげ山で、ねずみの元気になるような薬草も生えていなければ、おいしい果物もありません。
動物さえ、この旅ねずみの他にはおりませんので、どこかへ助けを呼びにやることもできません。
ねずみの熱が随分と高いことは、火山にもわかりました。
「ああ。しまった。おれはこの小さな友の危機に、何もしてやれないのか」
火山はこの時初めて、今まで気ままに繰り返してきた噴火のことを悔いました。
ねずみの熱は三日三晩続きましたが、火山にはねずみを元気づけてやるほか、何もしてやれることがありませんでした。
嵐が過ぎてから五日目のこと、火山の近くを鳥の群れが通りました。
火山はこれこそ天の助けとばかりに、あらん限りの声で叫びます。
「おおい。おおい」
「ああ、いやだ。らんぼう者の火山じゃないか」
「相手にするなよ。さあ、行こう」
しかし、火山がいくら声を上げても、鳥たちは通り過ぎていってしまいました。
友の危機。しかしそれを意にも介してくれない冷たさに、火山は少しいらだちましたが、今火山の洞窟の中では大事な友が眠っていますので、怒っている場合ではありません。
「おおい。おおい。誰か。誰か助けてくれ」
火山は必死に、飛ぶ鳥たちに呼びかけました。
「おい、らんぼう者の活火山。どうしたんだ」
朝昼晩と呼びかけていたためでしょうか、とうとうその声に答える者が、空からすいっと近づいて参りました。
羽の大きく立派な、一羽の鷲でした。鷲は火山の上でぐるりと旋回いたしますと、火山のてっぺんに足をつけました。
「ああ。ああ、よかった。助けてくれ。おれの友達が、洞窟の中で苦しんでいるんだ」
火山はほっとして、弱り切った声で鷲に助けを求めました。
鷲は不思議そうに首を傾げます。
「ほう。活火山の友達か」
「ああ。友達のねずみだ。嵐のせいで、すっかり体を冷やして病を得てしまったのだ」
「何。ねずみだと」
鷲は少し考えた様子を見せますと、やがてにやりと笑ったようでした。
「おい、らんぼう者の活火山よ。俺が助けてやろうじゃないか。何、ねずみには少しばかり詳しいんだ。ねずみの医者の所へ連れて行ってやろう」
「本当か」
「ああ。俺のこの立派な翼を見ろよ。これでどこまででもひとっ飛びだ。さ、ねずみはどこにいる」
「この、一番下の洞窟だ」
火山は有頂天でした。ねずみを医者の所へ連れて行ってくれるというのです。鷲の素早さは火山も知っていましたから、きっとすぐ良くなるだろうと信じて疑いませんでした。
やがて鷲はねずみをその口にくわえて洞窟から出てきました。
ねずみは顔色も悪く、ぐったりした様子ではありましたが、最後にはにっこり笑うと火山にお別れを告げました。
「さようなら。やさしい火山さん。もう、噴火してはいけませんよ」
「ああ、ああ。約束だ。きっと良くなってくれ。そして、どうかまたここへ来て住んでくれ。それまでにおれは緑を増やしておくから」
「ええ。約束です」
鷲は二人の会話が終わったのを聞き届けますと、翼を広げてさっそうと飛び立ちました。
それから、火山は待ちました。ねずみの帰りを待つ間の何と長いことでしょう。火山として生まれてから永の時を過ごしていたというのに、ねずみを待つ間は一日一日が随分と長くていけません。
きっと今日には良くなっているだろうか。いいや、明日にはここへ来るに違いない。いやいや、あのちっぽけな体だ。足で歩いてくるのなら、きっと時間がかかるだろうから、明後日になるかもしれない。それとも鷲が運んできてくれるのだろうか。
火山にとって、ねずみを待つ時間は寂しくも、楽しいものでもありました。こんなわくわくした気持ちは生まれて初めてです。
とうとう待ちきれなくなった火山は、近くを通りがかった、老いた白うさぎに、ねずみの噂を聞かないか問いかけました。
「はて。ねずみ? そう言えば昔、春の嵐の日に出会ったような気もするが」
「ああ。その嵐で病を得た一匹の旅ねずみだ。帰ってくると約束した、ずいぶんちっぽけな友達だ。ねずみの医者に連れて行ってもらうため、鷲にお願いしたのだ」
「きみ、それは、何てことをしたんだ!」
火山が説明しますと、老うさぎは驚いてぴょんと飛び跳ねました。
わなわなと震えて、やがて老うさぎは嘆き始めました。
「愚かなことを! 鷲にねずみなんて差し出せば、食べてしまうに決まっているじゃないか!」
老うさぎの言葉に、火山はしばらくの間、言葉もありませんでした。老うさぎは悲しそうな顔をします。
「ああ。何て憐れな旅ねずみ。群れにはぐれ、友に裏切られ……」
「そんな。そんなはずは……、おれは……」
火山は白うさぎの言葉を否定しようとしましたが、確かにねずみから便りもなければ鷲がこの辺りを通りがかることもありません。
すっかり鷲に騙されてしまったのだと気づいた火山は、怒りに打ち震えました。
また噴火するのだと思って逃げ出す老うさぎを目で追いながら、火山は静かにマグマをたぎらせ始めました。
何もかもめちゃくちゃにしてやる。騙した鷲も、事実を教えたうさぎも気に入らない。
帰ってくると約束していたのに。火山が怒りでうなり始めた時、ぽつりぽつりと雨が降り出して、火山ははっと気づきました。
「何もかもおれのせいではないか。おれが鷲に友達を預けたのだ。唯一の友を預けたのだ」
冷たい雨のせいか、噴火しかけていたマグマが少しずつ静まっていくようです。
「ああ。ねずみはきっと、何もかも分かっていたのだ。あの賢い旅ねずみだもの。鷲の危険を知らないはずがない。それだのに、おれに恥をかかせまいと、あえて知らぬふりをしたのだ」
火山はそのことに気づきますと、自分の噴火するのがまるで見当違いであることが分りました。
雨の強くなる中、火山はずっと、何かを考えるようにして黙り込んでいました。
それから、何十年もの時が経ちました。すっかり休火山となった、らんぼう者の活火山にはたっぷりと緑が生い茂り、美しい沢や泉もできました。今や、緑や飲み水を求めて多くの動物たちがやってきては楽しく遊んでおります。
彼らはかつて、ここが活火山であったことなどは知らず、物言わぬ、穏やかな休火山であると考えておりました。
火山は静かに暮らしながら、それでも時々は旅ねずみのことを思い返しておりました。
初めて出会ったときのこと。
どうして噴火するのかと聞かれた時のこと。
やさしい火山と言われた時のこと。
病を得た時のこと、鷲に預けてしまった愚かな過ちのこと。
そしてきっと、天の助けで鷲から逃げ出したとしても、あのちっぽけな体ではとっくに寿命を迎えているだろうこと。
ねずみはそれが分かっていながら、いつか火山が緑で埋まることを夢見て、住みかにすると言ってくれていたのだろうこと。
火山はこの数十年で色々なことを考え、時々物思いに沈んでは静かな涙を流しておりました。
その涙は沢となり、泉となり、いっそう緑を潤すのでした。
ある日、数十年ぶりの嵐になりました。動物たちはめいめいに、木や草の中、穴ぐらの中へ避難しております。今の火山は、避難場所にされることを拒みもしません。ただ静かに、受け入れております。
しかしやはり、こんな嵐の日だけはかつての自分を思い出し、失った友のことを悔いて、少し薄暗い気持ちになるのでした。
休火山が空模様を見つめてため息をついておりますと、小さな来訪者の声がいたしました。
「火山さん。火山さん。お休みのところ、ご無礼をお許しください」
「……」
いったいどうしたことでしょう。確かに聞き覚えのある声でありました。火山ははやる気持ちを抑えながら、声のする方へ目をやりました。
「このわたしに、どうか一夜の宿をお貸しください」
「ああ――」
自らの行いを悔い改めた火山への、神さまからの贈り物でしょうか。
火山はそのちっぽけな姿を何度も確かめますと、やがて震える声で答えました。
「ええ。ええどうぞ。どの洞窟でも、お使いください」
「ありがとう。……あなたは本当にやさしい火山ですね」
彼がかつての旅ねずみであるのか、それとも生まれ代わりであるのか。
火山にとってそんなのは些細なことでありました。
ただ確かなことには、唯一の友にそっくりな旅ねずみが一匹、にっこり笑って火山を見つめていたのでした。