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​水をやる老爺

 老爺は枯れ木に水をやっていた。
 その木は枯れた、花も芽も出ぬという忠告はいずれ老爺への失笑に変わっていたが、それでも構わず老爺は枯れ木に水をやっていた。
 少年はある日聞いた。
「おじいさんはどうして枯れた木にお水をあげるの?」
「ここには愛犬が眠るのだよ」
「どうして木が枯れているの?」
「随分長い時が経ったからだよ」
「どのくらい?」
 無垢な質問に老爺は少し考えるそぶりを見せると、やがて苦笑した。
「君の、ひいひいおじいさんが子供の時ぐらいからだよ」
 少年はやがて大人になり、家庭を持った。
 かつて神の遣いを飼っていた永遠の老爺は、今日も枯れ木に水をやっている。

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