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言葉がやがて枯葉となっても

 美しい詩を神に捧げる者が居た。
 彼の言葉はあまりに美しいので、神は彼を愛し、紡ぐ言葉を全て美しい花へと変えた。
 彼が詩いながら道行けば花は咲き溢れ、枯れた木は青々として幹を伸ばしいつかのようにまた花をつけた。
 この不思議の力を彼が誇ることはあっても、決して驕ることはなかった。
 ある時彼は恋をした。
 驚くほどに美しい娘に恋をした。
 彼は詩を捧げ、花を捧げたが決して娘の振り向くことはなかった。
 娘は既に夫ある身であった。
 彼はそれを知りながらも娘に詩を捧げ続けた。
 ある日神は彼の不貞に怒り、不思議の力を取り上げた。代わりに、彼の声と紡ぐ言葉を全て枯らしてしまった。
 彼は声を失っても、言葉を紡ごうとすれば周りの木々が枯れようとも、ただ娘に詩を捧げ続けた。
 あるいは空に、大地に、娘を想う詩を捧げ続けた。
 とうとうある日、娘の彼に絆される日が来た。
 娘の夫の亡くなり、娘がとうに老婆となり果てしばらくした後のことであった。
 しかし彼にとって彼女こそが生きる意味であったから、婚礼の日には心よりの感謝を、もはや枯葉となった言葉で精いっぱいに紡ぎ続けた。
 不思議なことに、枯葉となったはずの言葉はかつての若い日のように、もう一度花となり現れた。
 彼は老婆と結ばれる幸福に、神に許された幸福に感謝し、全てを愛する言葉を詩にして捧げた。
 やがて彼の身は花に覆われ、一輪の真っ赤な薔薇となった。
 老婆が慈しむようにして薔薇を抱きすくめると、薔薇より伸びた棘が二人を神のもとへ連れて行ったということである。

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